“テロリスト”と呼ばれて

久々にK氏宅にて餃子。

喜多方・宇都宮ドライブ」以来の餃子だが、手作り&できたては美味。本場の餃子にも引けを取らない味に大満足。

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餃子を頬張りながら、たまたま放映されていたNHKスペシャル「“テロリスト”と呼ばれて」を観る。

言われなき容疑をかけられてグアンタナモ収容所に送り込まれ、何年も収容された人々のインタビューで構成される。そして番組は、「収容時の問題」と「釈放後の問題」という2つの側面を照らし出す。

「収容時の問題」として、第一に、グアンタナモ収容所には世界中から799名もの人々が収容されていたが、なぜこんなに多くの人々が送り込まれたのか?

その理由の一つに、ブッシュ政権の姿勢にある。「テロとの戦い」という名の下、ブッシュ政権はテロリストを捕らえることに執着した。そのため、「疑わしきは罰せず」という原則を無視して、疑わしき者を次から次へと捕らえてきた。

別の理由として、軍の事情を指摘する。次から次へと拘束される人々を調べる余裕が軍には無かった。そこで、手っ取り早い手段として、軍はテロの容疑者たちをグアンタナモ収容所へと送り込んだ。

さらに注目する理由として、アフガンやパキスタンでアメリカ軍が撒いたビラにある。重要な情報提供に対して密告者に支払われる報奨金、ビラには2、500万ドル(1ドル=100円として、25億円)の文字。報奨金と引きかえに外国人を中心とした多くの人々が捉えられたという。

ちなみに世界銀行のデータによると、アフガンの一人あたりの国民総所得は年370ドル、パキスタンは年1,020ドル(2009年)。アフガンやパキスタンの一般市民の目に25,000,000ドルがどのように映ったかは想像に難くない。

「収容時の問題」として、第二に、収容者が置かれた曖昧な法的地位がある。アメリカは収容者たちを「戦争捕虜」でも「犯罪者」でも無い「敵性戦闘員」とした。そうすることで、正式な裁判をすることなく長期に渡って収容者を拘留してきた。その中には、8年も拘留された者までいる。

「戦争捕虜」であればジュネーブ第三条約が適用され、軍事裁判を受けるなどの諸権利を持つことができる。「犯罪者」であれば、アメリカの国内法によって刑事裁判を受けるなどの諸権利を持つことができる。それを避けるためにアメリカは「敵性戦闘員」という訳の分からない立場を作り上げ、収容者たちを法の範疇外に隔離し続けた。

結局、収容者たちはジュネーブ条約が適用されることになるが、グアンタナモに送り込まれた779名のうち、軍事法廷でテロに関わったりテロ組織の一員と認定されたのは、わずか4人。しかも、釈放された収容者たちへの不当な拘束に対して、アメリカ政府は謝罪すらしていない。

「釈放後の問題」として深刻なのは、「グアンタナモの烙印」を収容者が背負っていることだ。その烙印によって国に帰っても元の生活に戻ることができず、仕事もままならない収容者たち。さらには、政府からの迫害を恐れて自分の国にすら帰れない者までいる。

特に、国内にテロ問題を抱える国々は「グアンタナモの烙印」を押された帰国者をテロ組織に関わりあるとみなし、彼らを不当な拘束や監視下に置く。そのため、家族と離れて縁もゆかりもない国で生活することを強いられる者もいる。このように、釈放されても収容者たちは元の生活に戻れるわけではない。

番組で取り上げられていた収容者の一人、クウェート出身のアブドゥラ・アジミ氏。彼はアフガンで拘束されグアンタナモに3年間収容された。彼は過酷な拷問に耐えきれず「タリバンだった」と答えた。アルカイダと答えるよりタリバンと答える方がマシだと思ったという。

それにも関わらず、彼は2005年に突然釈放される。しかし、クウェートに戻っても元の生活を取り戻すことはできなかった。婚約も解消され、どんなに努力しても社会から拒絶されていると感じるようになった。次第に人柄も変わっていったと、彼と交流のあった友人は言う。

消息の途絶えた彼が確認できたのは、イスラム過激派の宣伝ビデオの中だった。ビデオの中で銃を手にした彼は話す。

「神様 虐待ばかりのグアンタナモから解放してくださり感謝いたします。神様のおかげでイラクでの戦いに立ち上がれます」

そして、2008年3月、彼はイラクで自爆テロを行なう。

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番組で取り上げられていた人々の釈放後の生活はどれも筆舌に尽くしがたいが、その中で憎しみが憎しみを生み出してしまったのがアジミ氏だ。チェチェン紛争の「黒い未亡人」と同様、彼もまた「憎しみの連鎖」に引きずり込まれた被害者だと思わずにはいられない。

無実の人の拘束を避けるためにテロリストを取り逃す危険か、またはテロリストを捕まえるために無実の人を拘束する危険かという二者択一の問題だと元ブッシュ大統領法律顧問はいう。そして、従来の法律による「疑わしきは罰せず」の原則は、戦争には通用しないと言ってのける。

しかし、戦争だからといって何をやっても良いというわけではない。収容者の法的地位を曖昧にしたまま何年も拘束し、挙句の果てに拷問まで行なうのは許されるものではない。戦争にもルールがあり、それを平気で破っていてはテロリストと何ら変わらない。

オバマ大統領によってグアンタナモ収容所の閉鎖は決定した。しかし、絶対にそれだけで終わらせてはならない。何よりもまず、テロリストと疑われて収容され拷問を受けた全ての人々に対してアメリカは謝罪をすべきだ。二次世界大戦時の日系人の強制収容問題と同じように、どんなに時間がかかってもアメリカは謝罪をしなければならない。自由を奪われ今も苦しむ人々に対してアメリカが為し得る最低限の贖罪なのだから。


参考:

防衛省・自衛隊:捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(第三条約)

グアンタナモにNO! : 軍事法廷 | AMNESTY INTERNATIONAL JAPAN

一刻も早く、グアンタナモ基地の閉鎖を: 人権は国境を越えて-弁護士伊藤和子のダイアリー

「水責めは正当だった」、後悔はないとチェイニー前米副大統領 国際ニュース : AFPBB News

チェイニー米副大統領、「グアンタナモ収容施設は存続すべき」 米テレビ 国際ニュース : AFPBB News

ライス元米国務長官、「水責め」導入を承認 米上院特別委員会 国際ニュース : AFPBB News

「テロ容疑者の無実、ブッシュ大統領も知っていた」、元米国務長官の側近が証言 国際ニュース : AFPBB News


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